毎年GW期間中に6年生対象のGS(ゴールデンウィーク・サピックス)特訓(以下GSと呼称)が行われています。今回はこの特訓の意味や効果的な受け方をご説明致します。
概要
日数/授業時間
日数→3日間
授業時間→70分/1コマ
コマ数→午前・午後で3コマずつ、計6コマを3日間で18コマ
科目
算数・国語→一日に2コマずつ(必ず午前午後に1コマづつに分かれます)
理科・社会→一日に1コマずつ
GSの目的
①内容面
内容面としてはまず大きな目的として『まだまだ不十分であることを体験させる』というものがあります。これは、子供は何の根拠もなく上手くいくと思いがちのためです。その甘い幻想を少しでも払拭し現実を理解してもらう、そのために本番にまだ近い(後々見直すとまだ簡単だと思えるはずです)レベルの問いを演習し、これを来年の2月までに出来るようにならないといけないんだ、と伝えるわけです。
もう一つは、特徴のある学校に関して傾向・特色などを説明をするためです。ただしこちらは担当により変わってきますので、毎年一定の内容になるわけではありません。そういう意味では、あまりとらえどころのない学校に関しては上記の目的の方が大きいと言えます。
②形式面
上記の内容が全てと思われる保護者が多いと思いますが、形式的な側面でもGSは意味を持ちます。
①授業時間の長さ
70分✕6コマ=420分→7時間という長時間の授業を受けることになります。これは子供にとって初めての体験になるでしょう。9:00に始まり17:00に終了する、この一日中授業があるという形式は後期から始まるSS(サンデー・サピックス)特訓のトライアルのようなものです。ここでどういう問題点があるのかを把握し、後期前に対処をするのです。よくある話しとしては、一日持たないということなどです。
②授業内での完結
GSの終了時刻は17:00です。普段の授業の始まる時間だから帰宅後にさらに勉強できるな、と考えられることは時期尚早です。子供はそれ以前に7時間の授業を受けてきたのです、その後に学習する体力・気力が残っているのかどうかは怪しいものです。場合によっては、普段と違う校舎に通い受講することになるかもしれません。そうなると余計負担が大きくなることもあるでしょう。
つまり、授業を受けて終わりになることも多くあるということです。それでは、授業を受けて終わりにするということなのかと感じられると思いますが、実際GSの授業日はそうなる子も多く居ると思います。その際に重要なことは授業内で完結させるという練習を行うことです。具体的には、授業内で自分が分かることを全力で理解し定着することを行い、逆に説明されても理解が出来ない内容は今は切り捨てるなどの意識を持って受講することです。これは後期の授業での練習になるわけです。
もちろん、今は完璧に行えることは難しいでしょうからGS終了後に折を見て補足を行うほうが良いでしょう。
こういった形式的な側面での体験を行うことが、SAPIXの後期の授業への練習になるという意味があります。
GSを欠席する
毎年、GSを欠席するご家庭が出てきます。果たしてこの選択は意味があるのでしょうか。
ほとんどの場合、欠席する際の理由は『その間に子供の底上げを行う』という理由でしょう。
しかし、この目的はほぼ達成できることはありません。何故なのでしょうか。
大体において、GSを欠席される根拠は下記の2つが多いと考えられます。
①長い時間を確保できる
確かにGSを欠席することにより時間を確保することは出来ます。2023年のGSは5/3〜5の3日間になります。4/29(土)が休校であることから、7日間の授業のない時間を得ることが出来ます。もしその間に意味のある学習を行えるのであれば、確かに大幅な改善は図れるかもしれません。
残念ながら、往々にしてこの選択肢を選ぶご家庭は『時間があれば学習できる』と考えている傾向にあります。しかし、それは現実を見ていないです。時間があればと言っても、すでにもう時間はあったのです。6年生の5月になるまでの間に相当な時間があったはずです。それでも改善が出来なかったのであれば、そのまま行ったとしても同じ結果にしかなりません。
厳しい言い方になりますが問題点は時間が足りないことではなく、現実と向き合っていないことだと言えます。
②欠席をオススメされる
個別指導や家庭教師、他にも自習室などが併設された塾などがここぞとばかりに売り込んでくることに乗るご家庭があります。私がSAPIXに在籍していた期間だけでも言えることですが、本当にこういうことを選んで好転したケースがありません。
そして今はSAPIXと関係のない立場になっていても、私は『参加したほうが良い』と伝えています。
まともな指導を考えている人ならば、欠席させる選択は提案致しません。では何故そういった提案が上記の教育産業から出てくるのかは、私からは経営側面としか思えません。これに乗っかり上手く好転すると思うことは、ギャンブルで一発逆転の発想と似ていると思います。
非常に辛辣な内容ばかりで辟易なさる保護者もいらっしゃるかもしれませんが、それでも好転できる家庭は現実を少なくとも保護者が向き合っているケースです。嫌な事は聞きたくない、厳しい現実には向き合いたくない、では子供が良くなることはありえないです。
本当に中学受験をどうにかしたいのであれば、厳しい現実に立ち向かう覚悟を持ちましょう。
GSの意味のある受け方
ではどのように受講することが意味があるのでしょうか。
私が考える一番重要なことは、GSが始まるからどのようにではなく、それ以前にGSを意味があるように子供を準備しておくことだと考えています。トンチのようで納得出来ない方もいるかと思いますが、受験全体に言えることとして事前に準備を行うことが最も重要なことです。実際に物事が起きてから動かれるのでは遅いのです。楽観的に何とかなるだろうと思うことや、時間が経ったら良くなっているだろうと考えることは失敗に向かう行動です。常に事前にどうするかを考え検討することが最も大事なのです。
まとめ
・GSの目的には志望校への内容面とSAPIXの後期授業への形式面の2種類がある。
・GSを欠席することはオススメできない。
・GSを意味のあるようにするには、事前に準備をしておくことが最も重要と言える。
中学受験を成功させるためにも、さらにその後の人生のためにも『成長』を遂げることこそ一番大事な受験の意義だと私は考えております。その『成長』の一つの側面は変化をするということだと言えます。
では、何故人は変化が出来るのでしょうか。私はそこに問題を感じるからだと思っております。これは良くないと感じるから気を付ける、あれは恥ずかしいからもうやらないようにする、こういった気持ちが自らの変化をもたらしてくれるのだと考えております。そのためには今この瞬間の現実と向き合う必要があります。辛く厳しい現実の方が多いものですが、目的を達成するには向き合うしかないです。まずは保護者が一歩踏み出しましょう。