中学受験6年後期:志望校別講座の意味と受け方

算数のコラム

6年生の最後の5ヶ月間、日曜日に志望校別の講座が始まります(早稲田アカデミーのNN特訓は4月からです)。
この志望校別に色々な希望を持たれている家庭も多くいらっしゃいますが、本当に上手く活用するためにはどうすれば良いのかをお伝えいたします。

志望校別への勘違い

まず絶対に勘違いしてはならないことがあります。それは、志望校別は一発逆転のための講座ではない、ということです。
志望校別の講座は2種類に分かれます。
・選別テスト有り型
・無選別型
このどちらであっても意味は変わりません。選別テストがあるということは、そもそもそれなりの実力がなければ受講すらさせないということになりますので当然ですね。SAPIXが代表的な無選別タイプであっても変わらない理由は、そもそもの志望校別の講座に対してのターゲットが違うからです。

志望校別のターゲット

では志望校別のターゲットはどういった子供なのか。志望校に参加している子供全員でしょうか?違います、想定しているターゲットは、志望校に少し届いていない子から何とか届きそうな子、までの範囲です。塾側・指導側が考えている志望校別の目的は、そのままでは合格できるかどうか不安な子を最後のひと押しで押し上げることです。それこそもう問題ないだろうと言えるレベルの子はより盤石になることがあるとはいえ、それすら目的では無いのです。ましてや、大きく届いていないレベルの子供が大逆転するということは視野に入れておりません。だから逆転のためなどの理由で志望校別を受講してはなりません。そして、そんなこともほぼ起こりません。テレビや漫画などで大逆転が描かれることが多いのは、それが現実には起きないからドラマチックでセンセーショナルな内容のため心惹かれるからです。しかし、現実は夢物語では無いのです。

大事なことは、開成コースに入っているから開成に合格できるんだ、などと思って受講してはならないということです。

基準

子供が志望校に届くかどうかの一つの基準に『偏差値』というものがあります。この数字でまずは判断をしていくことになります。試験ごとに『偏差値』が算出されますが、試験により意味が異なります。

通常のテスト・模試における偏差値
各塾にて80%偏差値で作られた偏差値表があります。私の経験上、志望校の80%偏差から1ずつ減った数字で合格率は10%減っていくイメージで考えています。つまり、もし志望校の80%偏差が60で持ち偏差が55だとすると80%から50%減らした30%ほどの合格率の実力と現状判断ができます。
もちろん確率で0%やマイナスなどは考えにくいのですが、80%偏差から10前後足りない場合の合格率はほぼ1%あるかないかほどの数字になります。これは相当の幸運を必要とした数字になることを承知頂くべきです。
〇〇中模試などの学校別の模試
通常のテストとは違い、その学校を受ける可能性の高い子供たちの中での試験になります。だから私は30%以上の結果が出せたなら受けてチャレンジしてみる価値は十分あると思っています。
保護者によっては、この学校別の試験で80%近くの高確率の結果を出せないことに不満を漏らすケースがありますが、それは非常に難しいことです。それこそ合格者の中でも、上位合格者に入るぐらいでないと厳しいでしょう。
逆に50%以上の合格率、4科目偏差値で50以上を出せても厳しいと判断することもあります。それはある1科目がとても良い結果だった場合です。例えば、算国理が40前後、社会のみ70の結果4科目偏差が50を超えていると言ってもこれでは本番は相当厳しいです。経験上、苦手で穴がある科目は許されて1科目です。2科目以上ある場合の合格はかなり厳しいと言えます。

これらの数字と塾での担当講師の話しなどから、志望校への見通しは考えましょう。
その上で、志望校別の講座をただ受講したら良いわけではありません。

志望校別を受講する際の受け方

一番大事なことは、喰らいついてやるという意識で臨むことです。ただ志望校別に参加している子と絶対に合格すると強く思い参加している子では同じ授業を受けてもまったく結果が違っていきます。如実に目に見えて差が出てくるのは復習テストの結果です。毎回何かしらの復習テストが用意されていますが、喰らいつく意識の子はこういったもので必死に結果を出していきます。習ったことを自分の中で次の回までに定着させていく、この当然のことをどこまで高い次元で続けていけるかにこの意識の部分が大きく関わっていくからです。9月段階で成績が同じぐらいの子も、この意識の差でどんどん実力にも差が出てきてしまうものです。

大校舎になると、例えば開成コースでも1つだけではなく多い年は4つぐらいあります。正直に言えば、開成コースと言っても3や4まで来るとほぼ開成は無理です。しかし、年により子供たちの意識が大きく違うことがありそれにより開成以外の結果が大きく異なります。例えば、同じ開成3であっても喰らいつこうとする子供たちの開成3とただ居るだけの子供たちの開成3では大きく違います。拙いながらも必死に喰らいつこうとしていく中で、確かに開成には不十分かもしれないですが子供たちは実力を伸ばし1日以外の学校で結果を残せていきます。ですが、ただ居るだけの子供たちでは実力は伸びず1日以外でも惨憺たる結果になってしまいます。そういった結果の差は、子供たちの意識の差です。

受験が競争である以上、意識というものは非常に大きく結果に影響していきます。子供だけでなく、家庭全体で合格するんだと強く意識し臨むことが一番重要なのです。

成績の足りない子供の志望校別

上記で私は成績が大きく届いていない子は志望校別のターゲットではないとお伝えしました。では、志望校別の受講は諦めろと言うのか、と感じられるかと思います。私はそれも選択肢の一つだと言うことは思っております。しかし、絶対に諦めろとまでは考えておりません。言えることは

受けるなら無策で受けるな
フォローを付けて必死に食らいつけ

という事です。
志望校に成績が大きく足りず、その上で志望校別の講座をそのまま受講しても無意味です。そのままで何とかなるのならばとっくに何とかなっています。もし本当に何としてでも志望校に合格をしたいのならば、残りの5ヶ月間を必死に行うしか方法はありません。しかもその必死というのは、周囲の子以上でなければ追いつけません。それを実行するには家庭教師を付け、効率的かつ大量に学習し実力を伸ばし喰らいつく以外はやりようは無いでしょう。子供は非常に辛いです、家庭もとても大変でしょう。でも残りの期間で覆すのであればそれを行うしかないのです。もし、ここまで行う覚悟があるのであれば少しの可能性が見出だせるかもしれません。

私は今まで個人塾からSAPIXまで最上位校を目指すコースを担当した際に、成績が大きく足りずその上で意識も持てない子で受験が上手くいった子供を見たことがありません。本当に何とかしたいのであれば、まず大人である保護者が本気で行う覚悟を持って下さい。覚悟があれば、私は可能性を見出すことが出来るかもしれません。

一番大事なこと

ただし、一番大事な事は本来は志望校別の段階よりももっと前にテコ入れを行うことです。
入試は当日に決まるのではありません、本当はもっと早くに決まってしまうのです。
保護者は見えない本当のスタートラインにいち早く気付き、子供の可能性を広げてあげましょう。

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