成長してこその中学受験

合格への道

ゆる受験という言葉がまことしやかに囁かれ始めるようになりました。
今回は中学受験に関して何を求めるのかという目的の観点で話しをさせて頂きます。
※あくまで武田の価値観・考え方からの意見であり、他の価値観を否定するつもりはありません。

ゆる受験の定義

まず話の筋のために、ゆる受験というものがどういうことかを決めようと思います。ゆる受験を調べてみると、進学塾に通わず受験をする・6年生になってから塾に通い受験する・その時の成績で合格できる学校を考える(最上位校は狙わないは幅広く言い過ぎだと思います)受験スタイル、などなど様々な話が出てきます。
まだ新しい話題なので世間的にもはっきりと決まっている言葉ではないせいだと思います。ですが、それぞれに共通した内容を考えて、今回はゆる受験というものは子供に負担を掛けない(もしくは極力少なくする)受験と定義付け致します。もっと直接的な表現も考えましたが今回は止めておきます。

ゆる受験をする目的

何故ゆる受験を求めるのか、その理由を考えてみました。

①習い事を続けたい

スポーツ・音楽、様々な習い事をやられている小学生が沢山います。私もある競技で全国大会レベルまでいく子を指導した経験があります。しかし、その習い事と中学受験の準備を並行して行うことは非常に負担を強いられます。そのため、習い事を止めずに中学受験の準備を行うためにゆる受験という選択肢を考えられるのでしょう。

②公立には行かせたくない(施設面以外の意味で)

地元の公立中が荒れている・評判が良くない、などが代表的な意見でしょうか。そういった公立中に行かせるぐらいなら、私立に入学したほうが良いということからゆる受験を選ばれるのでしょう。

③中学以降で成長すると思っている

中学・高校・大学、どこかのタイミングで子供が成長すると思われているのではないでしょうか。だから、適当な私立でも入学しておくことが後で役立つからゆる受験を選ばれるのでしょう。

代表的な理由は上記のようなものではないでしょうか。他にもそれぞれの家庭ごとに細かく理由があると思います。

矛盾

私は上記のようなゆる受験を望む理由から中学受験を行うことは自己矛盾を抱えていると思っています。

①習い事
上記にも書きましたが、以前にとある競技の全国レベルの子を指導したことがあります。そこで保護者に相談されたことは、平日は週4で朝練を学校前に行い学校後も練習を行う、土日もほぼ練習という一週間のスケジュールなんだがどうしたら良いか、ということでした。私は非常に驚きました、まさかこれほどに過密のスケジュールで練習しているとは思っていなかったからです。そのため、全国レベルまで至りさらにこれほどの練習を本人が望んで行えるのならばそちらに専念したら良いのではないかと伝えました。6年生の内容にまで至ると両立は不可能だと私は判断したからです。それならば本人が望んでいる方向で努力を積み重ねるほうが人生にも良い結果が出るのではないでしょうか。
ここまでのレベルで無くても、本当に本人が望んで過酷な練習にも臨むのであればそちらを選択しても構わないと思っています。どういう道を辿ることになるかは分かりませんが、自分が好きなものに精一杯努力を続けられた経験は必ず人生に意味をもたらしてくれるはずです。勉強が全てではありません。

②公立中
環境の悪い場に通わせたくないということですが、果たして私立は環境が良いのでしょうか?綺麗事を抜きにして言えば、揉め事・トラブルの類はどこでも起きます。それは公立・私立を問わずです。私自身の経験で言えば、人は3人集まると揉め事が起きると思っています。それこそ家族でも言い争ったり喧嘩したり起きるはずですから、他人同士なら尚更ではないでしょうか。それを何故私立なら起きないと考えるのかが私には理解できません。

また、残念ながらこういったトラブルの頻度は学校のレベルにも関わることです。決して上位校ではトラブルが起きないなどを言う気はありません。学力が高い子の中にも、人格的に問題がある子は確実にいます。ですが後はそういった子のいる割合です。どうしても割合が学校のレベルと相関していることは経験上見えてしまいます。

興味深かったことは以前指導し灘に進学した子の話しでした。灘中に進学し一年後、次年度の生徒が灘中の受験をする際の応援時にその子と会うことが出来話しをしました。学校はどうなのかと訪ねた時に、彼はこう言ったのです、『楽で良かった』と。私は非常に驚きました、それ以前に学校の進度の速さ(中1の2学期には平方根を習うレベルです)や合格して天狗になっていた鼻っ柱が宇宙人レベルで優秀な子を目の当たりにして思いっきり折られていたことを本人からの相談で聞いていたからです。驚いた私が詳しく聞きました、それで分かったのは彼が言う『楽』というのは学校の内容ではなく、学校にいる人達についてでした。彼曰く、信じられないことをする人がいない、ということです。もちろん様々な人がいます、お笑いが好きで色々な人と関わる子から自分ひとりの中で完結する子、繊細な性格から少し乱暴な性格の子まで様々です。でも、小学校で彼が見たようなそれをして何の意味があるのかという信じられないことをする子はいないということでした。

もちろん多様性などの観点での是非はあるかと思いますが、それは今回とは関係ない別基準の話なので割愛致します。

というわけで、私立の環境が良いというのは本当にそうでしょうか。

③成長
私が一番大きく矛盾を感じる点がここにあります。別に中学受験という観点でなくともそうなのですが私には子供が勝手に成長するということが信じられないのです。もちろん、年齡とともに成長していく子供がいるとは思います。ですが、それはたまたまではないでしょうか?私は自分自身子供の親として、子供が勝手に成長するかどうかを運に任せることはとても出来ません。何をするのかは自分で選択するもので、それを得られる能力を持たせられるよう成長できるようにすることが保護者の役割と考えています。

では成長するために必要なものは何かと言えば、それは『負担』です。筋トレなどと同じです。辛い重さで『負担』をかけることで肉体は成長していきます。逆になんの『負担』にもならないようなものを行ったとしても、ビックリするほど何も変わらないです。
その観点で言えば、中学受験は非常に『負担』がかかります。だからこそ、驚くほどに成長が出来ます。それこそが中学受験の意味であり、意義と考えています。その重要な『負担』を減らすことに何の意味が生まれるのでしょうか。また、その後に何故子供が成長できると考えられるのでしょうか。

まとめ

上記の内容は全て、私の価値観・考えのもとでの視点です。だから、『言っていることは間違っている』『そんなことはない』などを思われることはまったく問題なく、価値観・考えが違うということなだけだと思います。しかし、そうであるならば中学受験に臨まれることは矛盾していると思います。

中学受験は過酷です。しかし、だからこそ子供は大きく成長が出来るのです。本当の意味で子供の将来に繋がる中学受験を目指されるご家庭を応援致します。

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